経筋病・運動器疾患の鍼灸治療
経筋とは簡略に言うと経絡の流れている筋肉という事です。そして経筋病は主に陽の経絡(陽経)の流れている部位に発症します。肩こりや寝違いは陽経の経筋病です。
経筋が損傷する原因はさまざまですが、多いものに冷えがあります。陽気が少なくなると、冷えて痛みが発生します。
体内では経絡を流れる気は昼は体表に出て身体の防御などをしながら循環していますが、夜になると、身体の内に入って人は眠ると考えていますので、外に陽気が少なくなって痛み出します。また一日の中で気温や体温が最も下がる明方にも痛む事が多くなります。
また、陽気は適度に発散もしていますので、痛みは冷えだけではなくて、冷える事で陽気の発散が出来なくなって、その経絡に熱が滞って痛む事もあります。
そして身体は上半身は陽で下半身は陰ですから、身体の上部にいくほど、熱が停滞する事で痛みが発生します。
つまり肩、首、背中などの痛みは熱が停滞して発生している事が多いですし、腰から下の部位は寒が停滞して痛みが発生する事が多いのです。
そして、このような寒熱、虚実の状態は気・血・津液の不足から発生するという事になります。
少し具体的な状態を書くと下記のようになります。
- (1) 出産・精神労働・婦人病により血虚→筋の引きつり、筋肉の張り、痙攣したような痛み。
- (2) 座り仕事・暴飲暴食・内臓疾患→熱証では弾力はあるが、皮肉が硬い。寒証では体質的に胃腸が弱い→皮肉が柔らかい。
- (3) 婦人病・外傷・暴飲暴食など→筋が硬い。紐を結んだような硬結が中心。
- (4) 肺気の循環が悪い→皮膚の緊張、異常感。他覚的に凝っている。
- (5) 労働・房事過度→津液不足→皮肉が硬い、硬結は少ない、自覚的凝りを訴える。
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